下垂体ホルモン


下垂体は視床下部の下に
 垂れ下がっている。

・下垂体は脳下垂体とも呼ばれ、英語では
 hypophysis、あるいはpituitary gland と呼
 ばれる。
・ 「pituita」 はギリシャ語で「粘液」を意味
 し、発見された当時は粘液を分泌するだ
 けの器官だと解釈され、命名された。
・脊椎動物の脳の直下(腹側)に垂れ下が
 るように存在するために下垂体と呼ばれ
 る。
・ヒトの脳では、脳の正中部にあってトルコ
 鞍と呼ばれる骨のくぼみの中に存在し、
 視床下部の下面に漏斗とよばれる短い
 柄によって付着する形態である。
・大きさは7~8 mm、重さは約700 mgであ
 る。

  
下垂体は全身に送るホルモンを分泌している。
・下垂体は多種類のホルモンを分泌する内分泌器官である。
・血管が非常に発達しており、分泌されたホルモンが効率よく血流に乗って全身に運ばれる。
・それを受け取るのは、ホルモンの種類によって、特定の標的臓器であったり、全身の細胞であったり
 様々である。

図:James F. Thompson, Ph.D. MT(ASCP)より引用

・上図では、およそ下半分が下垂体である。下垂体の上部には視床下部(Hypothalamus)が存在する。
・右下の部分は下垂体の前葉(Anterior lobe)、左下の部分は下垂体の後葉(Posterior lobe)である。

前葉は分泌腺だから視床下部から命令が下るが、
 後葉は視床下部の延長だから命令不要。

・下垂体は前葉と後葉に分けられ、それぞれは発生過程における起源が異なる。
・その中間部分は一般的には前葉に含められるが、中葉と呼ばれることもある。
・前葉は上下垂体動脈から、後葉は下下垂体動脈から血液が流れ込む。
・前葉は腺性下垂体とも呼ばれ、そこに存在している細胞によってホルモンが産生され、分泌される。
・一方、後葉は神経性下垂体とも呼ばれ、細胞体自体は視床下部に存在する。そこで産生されたホル
 モンは神経細胞の軸索をとおして後葉に運ばれてから分泌される。
・従って、独立した細胞群である前葉は、あえて視床下部からの放出因子によってコントロールされる
 必要がある。



【下垂体前葉ホルモンのまとめ(6種類)】


 <略して呼ばれることが多いため、その英語の意味の解説も付記しておいた。>
GH growth hormone 成長ホルモン
 growth:「生長」、「成長」、「発育」
 ・下垂体前葉から分泌される単純タンパク質ホルモンである。(アミノ酸191残基)
 ・成長促進作用、肝臓からのグルコース放出を促進することによる血糖値上昇作用、脂肪組織から
  の脂肪酸遊離による血中脂肪酸上昇作用を示す。
 ・視床下部からの成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)により分泌が促進され、ソマトスタチンにより抑
  制される。

ACTH adrenocorticotropic hormone 副腎皮質刺激ホルモン
 adren-、adreno-:「副腎の」の意の連結形
 cortico-:「cortical 皮質[性]の」の意の連結形
  cortex:「皮質」  adrenal cortex:「副腎皮質」
 -tropic:「向性」、「親和性」、「・・・の刺激に応じて転回する」の意の接尾語
 ・下垂体前葉から分泌されるペプチドホルモンのひとつ。(アミノ酸39残基)
 ・副腎皮質に作用し、副腎皮質ホルモンの分泌を促進する
 ・視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により分泌が刺激される。
 ・糖質コルチコイドにより分泌が抑制される(ネガティブフィードバック)。

TSH thyroid stimulating hormone 甲状腺刺激ホルモン
 thyroid:「甲状の」  thyroid gland:「甲状腺」
 stimulate:「刺激する」
 stimulating hormone:「刺激ホルモン」
 ・下垂体前葉から分泌される糖タンパク質ホルモン。
 ・甲状腺に働きかけ甲状腺ホルモンの分泌を促進させる。
 ・視床下部にも働きかけTRHの分泌を抑制する。
 ・視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)により分泌が刺激される。
 ・甲状腺ホルモンにより分泌が抑制される(ネガティブフィードバック)。

FSH follicle stimulating hormone 卵胞刺激ホルモン
 follicle:「濾胞」、「小嚢」、「卵胞」 (濾:布などで液をこす)
 stimulating hormone:「刺激ホルモン」
 ・下垂体前葉から分泌される糖タンパク質ホルモン。
 ・未成熟の卵胞の成長を刺激し成熟させる。
 ・男性においては精巣のセルトリ細胞のアンドロゲン結合タンパク質の産生を増幅する。
 ・視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)により分泌が刺激される。
 ・卵胞は成長するとインヒビンを分泌しFSH産生を遮断する。

LH luteinizing hormone 黄体形成ホルモン
 luteinize:「~に黄体を形成させる」
 ・下垂体前葉から分泌される糖タンパク質ホルモン。
 ・女性において、排卵の誘起と卵胞の黄体化を誘引し、男女両方で性腺からの性ステロイドホルモン
  の産生を刺激する。
 ・視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)により分泌が促される。
 ・性腺からの性ステロイドホルモンによりネガティブフィードバックを受ける。

PRL prolactin プロラクチン
 pro-:「前」、「前方」の意の接頭辞
 lact-、lacti-、lacto-:「乳汁」の意の連結形
  (「酪(らく)」:牛・羊などの乳からつくった飲み物)
 -in:化合物、薬品などの名詞を作る
 ・下垂体前葉から分泌される単純タンパク質ホルモンである。(アミノ酸199残基)
 ・下垂体のプロラクチン産生細胞の他、胎盤や子宮など末梢組織でも産生される。
 ・乳腺の分化や発達、乳汁合成促進、乳汁分泌促進、黄体の維持、プロゲステロン分泌の維持、授
  乳などの母性行動の促進、授乳期の排卵抑制。
 ・その他、免疫応答、浸透圧調節、血管新生、男性の射精後の急速な性欲減衰などにも関与する。
  (血中濃度:成人男性は3.6~16.3ng/ml、成人女性は4.1~28.9ng/ml)。
 ・通常は、視床下部からのドーパミンなどのプロラクチン抑制因子によって放出が抑えられており、
  TRHなどのプロラクチン放出因子や乳首刺激によってによって放出が促進される。



【下垂体中葉ホルモン(1種類)】
MSH melanocyte stimulating hormone メラニン細胞刺激ホルモン
 mela-、mel-、melo-:「黒い」の意の連結形
 melan-、melano-:「黒い」、「黒色素」の意の連結形
 -cyte:「細胞」の意の名詞語尾
 stimulating hormone:「刺激ホルモン」
 ・下垂体の中葉(前葉と後葉の境界部分)から分泌される。
 ・メラニン細胞のチロシナーゼを活性化させ、メラニン合成を促進する。
 ・日光に曝されることにより分泌促進される。



【下垂体後葉ホルモンのまとめ(2種類)】
バゾプレッシン vasopressin
 vaso-、vasculo-:「脈管」、「血管」の意の連結形
 press:「圧迫」
 -in:化合物、薬品などの名詞を作る(上記参照)
 ・下垂体後葉から分泌されるペプチドホルモンである。(アミノ酸9残基)
  (視床下部にある神経細胞体で合成されたプレプロホルモンが、軸索輸送により下垂体後葉にある
   シナプスへ送られる間にバソプレッシンとなり、血管内へ分泌される。)
 ・抗利尿ホルモン(英: Antidiuretic hormone, ADH)、あるいは血圧上昇ホルモンとも呼ばれる。
 ・腎集合管に働き、水の再吸収を促進することにより水保持作用を発現する。また、血管平滑筋を収縮
  させて血圧を上げる効果がある。そして、オキシトシンと共に、愛情・信頼・社会性の形成に関わると
  される。

オキシトシン oxytocin(OXT、OT)
 oxy-:「鋭い」、「とがった」、「急速な」の意の連結形
  oxytocic:「分娩を促進する」、「分娩促進剤」
 -in:化合物、薬品などの名詞を作る(上記参照)
 ・下垂体後葉から分泌されるペプチドホルモンである。(アミノ酸9残基。バソプレシンとはアミノ酸が2カ
  所だけ違う。視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉に送られる。)
 ・平滑筋の収縮を促すことによる授乳時の乳汁射出作用(乳汁射出反射)や分娩時の子宮収縮作用。
  その他、愛情・信頼・社会性の形成にも関わり、「愛情ホルモン」「信頼ホルモン」などとも言われる。
 ・乳首などへの皮膚刺激によって分泌が促進される。


<関連リンク>
視床下部ホルモン  副腎皮質ホルモン  甲状腺ホルモン  性ホルモン
ストレスとは

2012年2月  stnv基礎医学研究室・清水隆文

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