寄生虫疾患・原虫疾患


寄生虫とは
 ・寄生虫とは寄生生物のうち動物に分類されるものをいう。体内に寄生するものを内部寄生虫、
  体表面に寄生するものを外部寄生虫というが、狭義では内部寄生虫のことを指す。
 ・現代の日本人の体内における寄生虫の数は激減したが、魚介類を含めた各種動物には依然
  と多数の寄生虫が存在する。また、輸入物の野菜などに虫卵が付着していることもある。
 ・したがって、これらを不用意に生食することは避けることが賢明である。
 ・下記には主なものをあげたが、これ以外にも多くの寄生虫が存在する。

アニサキス(Anisakis)

エキノコックス(Echinococcus granulosus)

Echinococcus granulosus の生活環

寄生虫疾患の主なもの
<線形動物門>
病原体 疾患名 寄生場所・特徴など 感染経路
回虫
(ヒトカイチュウ)
 

 
ヒトの小腸。体長:オス15~30cm、メス20~35cm。近年での寄生率は極めて低いが、輸入野菜などには注意。毒素による体調悪化、他の器官・組織に侵入して穿孔や破壊をもたらす。駆虫薬にて治療。小腸に生み出された卵はそのままでは成体にならず、糞便として体外に出てから成熟卵になる。 糞便中に出た卵が付いた野菜、卵が付いた指。
ぎょう虫
( ヒト蟯虫)
 

 
ヒトの盲腸。体長:オス2~5mm、メス8~13mm。乳白色でちりめんじゃこ状の形態。卵は卵型で直径40μm程度。現代においても寄生が見られる。駆虫剤によって治療、卵は死なないため反復使用。
肛門周辺に産卵→卵が付いた指など経由。卵は室内環境で数週間生存可能。
 
鉤虫(ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫)  鉤虫症
 
ヒトの腸。体長:メス11~14mm(ズビニ鉤虫)。日本ではほとんど見られないが、温暖高湿な発展途上地域に多い。皮膚から侵入→リンパ管・血管→肺→気道→咽頭→消化管(→小腸上部)へ。成虫は小腸上部粘膜に咬着して吸血し、鉄欠乏性貧血をもたらす。 糞便中の卵が土中で育って幼虫になり、皮膚(または口)から侵入。
 
アニサキス
 
アニサキス症
 
終宿主は鯨・イルカなどで、成虫が腸管に寄生。その糞便中の卵を中間宿主が捕食すると、感染性のある第3期幼虫に育つ。第3期幼虫の体長:11mm~37mm程度。幼虫を経口摂取すると、数時間後に激しい腹痛と嘔吐で下痢は無い。特効薬は無く、内視鏡を用いて取り除く。予防は食材の加熱や冷凍。 中間宿主は海産魚介類(サケ、サバ、アジ、イカなど)。海産魚介類中の生きた虫体を摂食。
フィラリア(ヒトの)  フィラリア症  主に海外においてヒトに寄生するフィラリアが数種類ある。例:バンクロフト糸状虫。体長:オス4cm前後、メス6.5~10cm。寄生箇所はリンパ管、リンパ節などのリンパ系。 中間宿主は蚊。蚊の吸血時に幼虫が侵入。

<扁形動物門>
日本住血吸虫  日本住血吸虫症  山梨県で発生していたが、1996年(平成8年)に終息宣言された。終宿主はヒト、その他哺乳類の血管内(主に門脈)。赤血球が栄養源。体長:オス9~18mm、メス15~25mm。常に雌雄が合体して生活する。侵入部位の皮膚炎、感冒様症状、虫卵による脳や肝臓などの塞栓症。 中間宿主はミヤイリガイ。水中にいる幼生が皮膚から侵入。 
肝吸虫  肝吸虫症  終宿主はヒトその他哺乳類。肝臓内の胆管枝に寄生。体長:10~20mm、体幅:3~5mm。雌雄同体。幼生(メタセルカリア)を摂食→小腸内で幼虫になる→胆管に侵入→肝臓内の胆管枝に定着→胆管炎→肝硬変。成虫の寿命は20年以上。吸虫駆除剤で根治可。 第1中間宿主はマメタニシ、第2はコイ科淡水魚。淡水魚中の幼生を摂食。
横川吸虫  横川吸虫症  小腸に寄生。日本ではアニサキスに次いで感染報告多い。体長:1~1.5mmの楕円形。雌雄同体。少数感染では自覚症状あまり無し、多数感染の場合は腹痛や下痢など。感染型幼生(メタセルカリア)をヒトなどが食べると小腸に感染して成虫になる。吸虫駆除剤と下剤で対処。 第1中間宿主:カワニナ、第2はアユ、シラウオ、コイ科。幼生を摂食。 
肺吸虫(日本では5種が疾患原因となる) 肺吸虫症(肺ジストマ)  カニ類を摂食→小腸→腹壁を穿孔→肺に移動し、ペアを形成して虫嚢を作る。腹膜炎、創傷性肝炎、胸水、気胸、咳、血痰など。脳に侵入することもある。吸虫駆除剤で対処。 第1中間宿主は貝、第2は淡水カニ。幼虫を摂食。 
広節裂頭条虫 (ハバヒロミゾサナダ)  条虫症  ヒト、その他の哺乳類の小腸に寄生。日本では寄生虫の中で年間感染報告者数第3位。体長は5~10m。自覚症状無しあるいは下痢、腹痛、悪性貧血。吸虫駆除剤(プラジカンテルなど)で対処。 第1中間宿主はケンミジンコ、第2はマス、サケ、カワマスなど。幼虫を摂食(鱒寿司)
有鉤条虫
(カギサナダ) 
成虫が有鉤条虫であり、幼虫は有鉤嚢虫と呼ばれる。成虫の体長:2~3m。幼虫を摂食することによりヒトの小腸で成虫になって寄生する。虫卵を摂取して体内で幼虫になった場合は有鉤嚢虫症。嚢虫が脳や眼で作られると重篤。嚢虫は吸虫駆除剤、成虫は摘出手術による。 中間宿主はブタ、イノシシなど。 生豚肉などから幼虫摂食。
無鉤条虫
(カギナシサナダ)
ヒトの腸に寄生。体長:4~10m。自覚症状はあまりない。多数寄生されると消化器系の障害が出てくる。吸虫駆除剤(プラジカンテルなど)で対処。  中間宿主はウシ。生牛肉から幼虫を摂食。
エキノコックス(包虫)
(単包条虫と多包条虫)
エキノコックス症(包虫症)  日本(北海道)では多包条虫が知られ、終宿主はイヌ科(キタキツネなど)。中間宿主は多種動物。人獣共通感染症。成虫の体長:2.5~9.0mm。ほとんどが肝臓に病巣形成(小嚢胞が多数集合した蜂巣状構造を形成→肝臓腫大、胆管閉塞・黄疸)、たまに肺に病巣形成(肺炎、胸痛、咳・痰、発熱)、ごく稀に脳・心臓・骨などにも。摘出手術や寄生虫駆除剤で対処。完治には5~10年かかる。 キタキツネ等イヌ科(あるいはネコ)の糞中の卵を摂食(井戸水や汚染食物摂食)。 


原虫とは
 ・原虫(げんちゅう)とは真核単細胞の微生物であって動物的なものを指す。
 ・「原生動物」と同義であったが、現在では寄生性で特に病原性のあるものについて言うことが多い。
  簡単に言えば、「寄生虫の中で単細胞のもの」である。
 ・生活環の中でシストやオーシストを形成することがある。
  シスト : 動物、植物、菌類において、その生活史の一部で、一時的に小さな細胞体や幼生が厚
        い膜を被って休眠状態に入ったような状態になるもの。被嚢・嚢子・包嚢などと訳される。
        単細胞の場合も、多細胞の場合もある。環境の悪化に対して一時的に形成するものも
        あれば、生活環の上で必ず形成されるものもある。
  オーシスト : ある種の原虫の生活環におけるステージの1つであり、接合子の周囲に被膜、被殻
           が形成されたもの。

Toxoplasma gondii の
 急増虫体 (tachyzoites).

Toxoplasma gondii の急増虫体の微細構造

Toxoplasma gondii の生活環
(ネコ糞便中のオーシスト、中間宿主食肉中のシスト、原虫(急増虫体)の胎盤感染)

原虫疾患の主なもの
病原体 疾患名・症状 感染場所・特徴など 感染経路
赤痢アメーバ  アメーバ赤痢症。血便、下痢、腹痛。メトロニダゾール、テトラサイクリンなどを投与。 ヒトの大腸に寄生、糞便中にシストを排泄。開発途上国旅行者での発生が見られる。 感染者糞便中のシストを摂食、あるいは性行為。 
マラリア原虫  マラリア。周期的高熱発作、頭痛、肝機能障害、貧血。悪性の場合は意識障害、腎不全、死亡。抗マラリア剤にて治療。 日本の土着マラリアは絶滅している。海外からの輸入感染症が年間100例以上ある。中間宿主がヒト、終宿主はハマダラカ。熱帯から亜熱帯に広く分布。  蚊の吸血時に経皮侵入。 
トキソプラズマ  トキソプラズマ症(胎児の場合、先天性トキソプラズマ症:原虫が中枢神経系の発達に影響する)。不顕性感染(健康成人では感染しても無徴候あるいは軽い風邪のような症状、1カ月以内に回復する)。エイズなどで顕性化。いくつかの薬が使われるが治療は難しい。  終宿主はネコ科、中間宿主はほとんど全ての哺乳類ならびに鳥類。特にヨーロッパ人では過半数が感染。胎盤経由で胎児に感染すると先天性トキソプラズマ症発症リスクがあるため要注意。 ネコ糞便中のオーシスト、食肉中のシストを摂食。増殖型原虫の胎盤感染(母子感染)。 
クリプトスポリジウム クリプトスポリジウム症。水様下痢の後に自然寛解。有効な治療法は無いため、水分補給などの対症療法を行う。エイズでは重症化。 たいへん多くの種があり、ヒトを含む脊椎動物の消化管などに寄生。5類感染症に指定。クリプトスポリジウムのオーシストは塩素系漂白剤などの消毒剤にも高い抵抗性をもつ。 感染者or感染動物糞便中のシストを摂食(プール、おむつ交換、汚染された食物など)
膣トリコモナス  トリコモナス症(膣トリコモナス症)。通常は女性のみ、膣炎・子宮頸管炎・尿道炎等の症状が出るが、男性は無症状のことが多い。 日本では女性の5~10%、男性の1~2%が感染。治療にはメトロニダゾール(抗原虫薬、抗菌薬)が使われる。 性行為、接触(下着、タオル、便座、出産時など)。 

<関連リンク>
真菌症 細菌感染症 マイコプラズマ・リケッチア・クラミジア感染症 ウイルス感染症

2012年10月更新  stnv基礎医学研究室・清水隆文

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