骨折


1.骨とは
・ヒトの成人の骨格はおよそ206個(幼児では約270個)の骨で出来ているといわれる。
・骨中の破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が骨を作るため、常に新しく生まれ変わっている。
・外側から骨膜、骨膜層板、骨皮質(緻密質)、海綿質(海綿骨)、骨髓からなる。
・骨皮質や海綿質の主成分はヒドロキシアパタイトや無構造
 のリン酸カルシウムであり、有機成分としてはコラーゲンが
 多い。
・骨の随所(栄養孔)から細い血管が出入りし、その多くは
 髄腔に達して走行し、骨髓からの血球の運搬や、骨全体の
 栄養に関わる。
・一部の細い血管は、ハヴァース管の中や、フォルクマン管と
 して走行する。(ハヴァース管とは骨皮質にあるハヴァース
 系と呼ばれる同心円状・層板性構造物の中心部を走行する
 小管であり、フォルクマン管とはこれらを横方向に連絡する
 血管を指す。)
・骨の役割は次のようである。
 ①体を支える。
 ②筋肉との連携によって運動することを可能にする。
 ③軟らかな臓器や器官を包んで守る。
 ④栄養素(骨質にはカルシウムなどの無機物、骨髄腔には
  脂肪)を貯蔵する。
 ⑤血球を作る(成人の場合は骨盤、脊椎、肋骨、胸骨などの
  扁平骨や短骨に限られる)。


2.骨折とは
・外力の作用が強くて骨組織の生理的連続性が部分的あるい
 は完全に断たれた状態をいう。


3.骨折の分類

図:MedicineNet,Incより引用:
若木骨折、らせん骨折、粉砕骨折、横骨折、開放骨折、脊椎圧迫骨折

(1)原因による分類
 ①外傷性骨折・・・・健康な骨にその抵抗力以上の外力が加わったために生じたもの。
 ②疲労骨折・・・・健康な骨の同一部位に繰り返し力が加わり、その集積として骨折を生じたもの。
 ③病的骨折・・・・骨に基礎的疾患があるために、わずかの外力によって骨折に至ったもの。

(2)解放性による分類
 ①閉鎖骨折(= 単純骨折、皮下骨折)・・・・骨折部が体外に開放されていない状態のもの。
 ②開放骨折(= 複雑骨折)・・・・骨折部が体外に開放されている状態のもの。骨折部が体外に露出
  するため細菌感染が起こる可能性があり、治療が複雑となることから複雑骨折と呼ばれる。

(3)完全性による分類
 ①完全骨折・・・・骨が完全に連続性を失っている状態のもの。
 ②不完全骨折・・・・骨が連続性を完全に失わない状態のもの。骨にひびが入っている状態である亀
            裂骨折や、骨膜には損傷はないが緻密層以下の部分が離断している骨膜下骨折
            などがある。

(4)外力の加わり方による分類
 ①直接骨折・・・・外力の作用した部位に起こったもの。
 ②介達骨折・・・・外力に対して間接的部分に起こったもの。

(5)骨折腺の数や状態による分類
 ①単独骨折・・・・一つの骨が一箇所のみ離断しているもの。
 ②複合骨折(= 重複骨折)・・・・一つの骨が複数箇所で離断しているもの。
 ③粉砕骨折・・・・複合骨折のうち、特に細かく離断しているもの。
 ④若木骨折・・・・小児期にのみ起こるもので、骨の一部に亀裂が生じて曲がるが、完全に折れては
           いないもの。

(6)外力のかかり方による分類
 ①せん断骨折・・・・骨の長軸に対して垂直方向に滑らせるような力が働いたもの。
 ②圧迫骨折・・・・骨が過度に圧迫されたことにより生じたもの。
 ③捻転骨折・・・・骨に対してねじるような力が働いたことにより生じたもの。
 ④屈曲骨折・・・・骨に対して折り曲げるような力が働いたことにより生じたもの。
 ⑤剥離骨折・・・・筋・腱・靭帯などの牽引力によって、その付着部の骨が引き裂かれて生じたもの。


4.骨折時の症状
(1)一般外傷症状
 a.疼痛・・・・骨自体には神経がないが、骨の表面にあって神経が集中している骨膜が破壊され、
         ほとんどの場合で強い自発痛や圧痛を生じる。骨折時の圧痛は骨折部に限局して強
         いのが特徴であり、これはマルゲーニュ骨折痛(Malgaigneの圧痛点)と呼ばれる。
 b.腫脹・・・・骨や周囲の組織の出血により腫脹が生じる。出血量は、骨盤骨折では1,500~2,000ml、
         大腿骨骨折では1,000ml、下腿骨骨折では500mlくらいである。
 c.皮下溢血・・・・皮下に近いところの骨折の場合、当該部分の皮下に溢血斑(出血斑)が現れ、2
           ~3日後が顕著である。
 d.機能障害・・・・骨折した部位を支えることができない、疼痛のために動かすことができない、など。

(2)骨折に固有の症状
 a.異常運動・・・・正常な状態では動かない部分が関節のように動く。
 b.軋轢音・・・・異常運動がおこる場合、骨折端同士が触れ合って音を出す。
 c.転位、変形・・・・骨折した骨がずれたり曲がったりする(転位)。その結果、骨折した部位の見た目
             の形が変わる。
(3)合併症
 a.脊椎の骨折では骨片が脊髄を損傷することによりその支配領域が麻痺したり、頸椎の場合では
   死亡する事もある。
 b.四肢の骨折では骨片によって神経や血管を損傷することもある。
 c.肋骨骨折の場合は、肺損傷や心臓損傷のおそれもある。
 d.骨髄が多量に存在する長管骨や骨盤などの海綿状骨が骨折した場合は、大量の内出血にとも
   なう出血性ショックや、骨髄腔内からの骨髄や脂肪滴による骨髄塞栓、脂肪塞栓などにより死に
   至るケースもある。
 e.高齢者では骨折により寝たきりとなりやすく、それに伴う認知症や肺炎などを引き起こしやすい。


5.治療法
 a.骨折の整復はできるだけ早期に行うべきである。
 b.開放創の場合、感染のリスクを低く抑え、安全に縫合できるのは受傷後6~8時間以内(ゴール
   デンタイム)とされる。
 c.単純骨折で骨の転位がなければそのまま固定をする。
 d.骨の転位がある場合は徒手整復や牽引などの非観血的整復術や手術による観血的整復術に
   よって正常なアライメントに戻し、一定期間固定し安静を保つ。
 e.複雑骨折では傷口の念入りな洗浄消毒や、汚染された組織の切除が行なわれ、抗生物質の
   投与も積極的に行われる。
 f.骨癒合に要する期間は一般的には次のようであるとあるとされる。
    グルト氏(Gult)の骨癒合日数
      2週間 ・・・・ 指骨、中手骨
      3週間 ・・・・ 肋骨
      4週間 ・・・・ 鎖骨
      5週間 ・・・・ 前腕骨(橈骨、尺骨)、腓骨
      6週間 ・・・・ 上腕骨骨幹部
      7週間 ・・・・ 脛骨 
      8週間 ・・・・ 下腿両骨(脛骨、腓骨)、大腿骨骨幹部
     12週間 ・・・・ 大腿骨頚部
 g.上肢の骨折の治療目標は手の機能の温存である。多少の変形や短縮は構わない。
 h.下肢の骨折の治療目標は無痛で安定した荷重ができることである。短縮しないように変形を極力
   避ける。
 i.ギプスにて固定された後に腫脹し、安静時においても疼痛が強い場合は循環障害を起こしている
   と考えられるため、ギプスを外して対策をとる必要がある。


6.治る過程

血腫および肉芽組織、軟骨性仮骨、仮骨および軟骨残滓、再構築
図:University of Glasgow より引用
(1)炎症期
 ① 骨折発生と同時に出血が起こるが、局所に血腫が形成され、速やかに血液が凝固する。なお、
   血液凝固に至るまでの出血量は上述の通りである。
 ② 凝血周囲に炎症反応が起こり、肉芽組織が形成されていく。
(2)修復期
 ① 肉芽組織には新生血管が盛んに侵入し、線維芽細胞によって線維網が形成される。
 ② 線維網は仮骨とも呼ばれ、線維組織、軟骨組織、未熟な骨組織が含まれ、これによって骨折断
   端同士が互いに連結される。
 ③ 仮骨は外面側および内腔側に向かって増殖するため、骨の外形は一時的に骨折部が膨らみ、
   骨髓腔は狭くなる。
(3)改変期
 ① 壊死に陥った骨や仮骨は吸収され、本来の強固な骨に置換されて骨癒合が完成する。また、
   骨髓腔には骨髓が再生される。
 ② 骨折部分の膨らみは年を経るごとに、受傷前の形態に修正されていく。


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2012年12月更新  stnv基礎医学研究室・清水隆文

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