痩せる方法


太らない方法
 太った人が痩せる方法、ダイエットの仕方
  (=適正な食事の仕方)


はじめに

 ここで扱う「太る」あるいは「肥満」は、あくまで単純性肥満(本態性肥満)であって、太る原因疾患が
無い場合に限る。ちなみに、太る原因疾患としては、副腎皮質ホルモンの過剰や甲状腺ホルモン
不足などの内分泌異常、内分泌系そのものをコントロールしている視床下部の疾患、あるいは遺伝子
レベルで体重コンロトール機能が欠落している遺伝的疾患などがある。また、ステロイドの多量投与
などの薬物による肥満も存在する。下記は、あくまでこういった基礎疾患が無い場合の話である。


どうして太ってはいけないのか?
①「アディポネクチン」分泌の減少
  アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるタンパク質であるが、体にとってたいへん重要な働き
 を担っている。例えば細胞への糖取り込み促進作用(通常はインスリンが結合することによってグル
 コーストランスポーターが働くが、インスリンの存在無しにグルコーストランスポーターが膜表面に移
 動しグルコース取り込みが行われるようになる)、インスリン感受性の亢進、動脈硬化抑制、抗炎症
 などが言われている。
  肥満になって脂肪細胞(特に内臓脂肪)が膨らむと、このアディポネクチン分泌量が減少するとされ
 ている。したがって肥満者では糖の利用が進まず、インスリンも効きにくくなるため、血糖値が上がり
 やすくなる。ここから悪循環が始まるわけである。
  糖質制限によって、アディポネクチン分泌量が増加するとの報告がある。

②「レプチン」分泌の増加→レプチン耐性
  レプチンは脂肪細胞から分泌されるペプチドホルモンである。「満腹ホルモン」とも呼ばれ中枢神経
 系に働いて食欲を抑え、また全身のエネルギー消費量を増大して肥満になるのを防ぐ働きをしている。
  肥満になると、脂肪細胞から多量のレプチンが分泌され続けて血中濃度がずっと高くなるのは良い
 のであるが、あまりにもレプチン濃度が高いためにそれを受けるレセプターが感受性(感度)を低下さ
 せてしまう。(=レプチン耐性)。こうなると、食欲も抑制されない状態が続き、悪循環の開始である。
  また、過剰なレプチンは交感神経の活動を亢進させ、血管を収縮させること等により、血圧を上昇
 させたり、脳の報酬系を抑制することにより、何かに成功しても快感が得られにくくなり、やる気がな
 くなり、仕事への意欲や能率も低下するとされる。
  レプチン耐性になってから、すなわち「満腹を感じない」状態になってからのダイエットは非常に辛い。
 そして、レプチンのレセプターが元通りに回復するのには相当の期間が必要になってくる。すなわち、
 短期間で正常に痩せることは生物学上ムリなことである。


非医学的なダイエット本や情報に惑わされないように
・次にもう一つ確認しておくが、○○○○大学の「食べて痩せるダイエットレシピ」などの類はカロリー
 および脂肪分の少ない食材に変更して、全体のボリュームを減らさないようにしているだけであって、
 特別な医学的理論によって痩せる方法を説いているわけではない。そのレシピに基づいて作った料
 理をたくさん食べれば太るのである。
・さらに非科学的なのは、食べる順番は野菜から・・などのような話しもあるが、胃の中での滞留時間
 は1~4時間であり、何秒~何十秒ほどの時間差をもって先に野菜、あとからご飯や肉を胃の中に
 入れようと、全てが胃の中で混ぜ合わされてしまい、野菜分だけが先に十二指腸に送られるなどと
 いった分別機能は胃袋は持ち合わせていない。
・たくさん食べても太らない人と、食べれば食べただけ太る人がいるのは事実である。基本的には生
 物は、全てが遺伝子の発現によってコントロールされている。食べても太らないと言う人は肥満を抑
 える遺伝子がしっかり機能しているのであろう。一方、食べたら食べただけ太るという人は、摂取し
 た栄養素を優先的に脂肪に変換して脂肪組織に蓄積し、いつ襲ってくるかもしれない飢餓に備えよ
 うとする遺伝子群の機能が優先しているのであろう。生物学的にはどちらかといえば後者の方が生
 存上は有利であり、大抵の人の場合は食べたら太ると考えてよい。
・「消化と吸収」について、「栄養素の代謝」については別ページに記したので参照のこと。


<痩せる方法 その1>
消費したエネルギー分だけ補給する
 ・自分は1日にどれだけのエネルギーを消費するのか、あるいは消費したのかを知り、その分だけ
  を食事として補給する。
★ 自分の1日の消費エネルギー量の計算
    体脂肪量(kg)=体重(kg)×体脂肪率(%)÷100
    除脂肪体重(kg)=体重(kg)-体脂肪量(kg)
    自分の基礎代謝量(kcal)=28.5×除脂肪体重(kg)
    1日に消費するエネルギー量(kcal)=自分の基礎代謝量×身体活動レベル
     身体活動レベルは、低い場合は1.5、普通は1.75、高い場合は2.00の数値が用いられる。
 ・余分に摂れば、たいていの人は太ることになる。当たり前の話である。
  栄養学的知識がなく、勉強するのもイヤな人は、こまめに体重を測定し、食べる量と体重の変化
  を記録し、食事の適正量を知ることである。
 ・すでに太っている人は、食べ過ぎているわけであり、少しずつ食べる量を減らしながら、毎日体重
  計測を行い、日数をかけながら目的体重に近づけていくこと。減らせないという人は下方の6を読
  んでください。

<痩せる方法 その2>
必要な栄養素は欠かさない
 ・健康な体を作り、健常に維持し、正常に活動させるためには、必ず食べなくてはならないものがあ
  る。換言すれば、体内で生合成できない成分であり、ダイエットだと言って不足させることは禁物
  であり、不足することによって正常な体重を維持できない体になってしまう。
 ①必須アミノ酸
   風呂場椅子一人目(フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニン(トレオニン)、
   ヒスチジン、トリプトファン、リシン、メチオニンの9種類)
   これらは大豆などの植物タンパク、魚肉、卵、動物肉、乳製品などをバランスよく食べることでバ
   ランス良く摂取できる。
   ただし、これらのアミノ酸も(タンパク質も)余分に摂れば、その分はケト酸→脂肪酸→トリグリセ
   リド(≒中性脂肪)に変換されて皮下、内臓周り、臓器に蓄積されたり、あるいは分解・排泄の
   ために肝臓および腎臓に負担をかけるので摂りすぎないこと。
 ②必須脂肪酸
   リノール酸とαリノレン酸の2つである。このうちリノール酸は現代日本では多めに摂取されてい
   るようなので、たいていの人はαリノレン酸不足になっていると言われる。亜麻仁油やシソ油(エ
   ゴマ油)などを1日に2グラムほど飲んでαリノレン酸を満たすことと、体内での生合成能が低い
   とされるEPAやDHAを海産魚類などから意識的に摂ると良い。
   なお、EPAには消化管ホルモンの一つであるGLP-1(Glucagon-like peptide-1:「グルカゴン様
   ペプチド-1」の分泌を促す作用が確認されている。GLP-1にはインスリン分泌の促進、ランゲル
   ハンス島β細胞の増殖促進、グルカゴン分泌の抑制、胃液分泌の抑制、中枢性の食欲抑制作
   用があることから肥満や糖尿病の治療に効果がある。
 ③ビタミン類(水溶性ビタミン脂溶性ビタミン
   正常な食事をしている限りでは、特に健常成人では不足になるものは無いと考えて良いが、加
   工食品が多い場合はビタミンCをサプリメントなどで補給することも良いであろう。
 ④ミネラル類
   Na、K、Ca、Mg、Fe、P、S、Znなどの他、ごく微量に必要とされるものがこれら以外にも多種
   類あるようである。これらは、バランスの良い食事を心がければ不足になることはまず無いと考
   えて良い。
   ただし、急激な大量発汗ではミネラル類も失われることになるので、うまく調合されたスポーツド
   リンクで臨時の補給をすれば問題は少ないであろう。
   調味料として繁用される食塩は精製されたNaClであるため、KやMgなどのミネラル成分が相
   対的に不足することになるので、塩を使うならば精製していない粗塩を使うことである。
 ⑤食物繊維
   食物繊維には上記のEPAと同様に、消化管ホルモンの一つであるGLP-1の分泌を促す作用が
   確認されている。GLP-1にはインスリン分泌の促進、ランゲルハンス島β細胞の増殖促進、グル
   カゴン分泌の抑制、胃液分泌の抑制、中枢性の食欲抑制作用があることから肥満や糖尿病の
   治療に効果がある。
   また、食物繊維は大腸の腸内細菌を健全に育成するために欠くべからざるものである。人間は
   愚かな自分の大脳による食欲に任せて食べることが多いが、実際には腸内細菌にエサを与え
   なくてはならない。腸内でも特に大腸の腸内細菌が重要であり、彼らと人類は太古の昔から共
   生してきたわけであり、彼ら無しで健康を保つことは出来ない。

<痩せる方法 その3>
パンなどの小麦製品を摂取しない
 ・特にパンやケーキ類に使われている小麦のデンプンは、消化が良すぎて消化管内ですぐにブドウ
  糖にまで分解されるため、砂糖(ショ糖)よりも血糖値の上昇が速い。その余分なブドウ糖を処理す
  るために、内臓脂肪を含めた全身の脂肪細胞はすぐさま脂肪に変換される。これが、脂肪が速く
  付いてしまう一番の原因である。
 ・一般に出回っているパンなどに使われている小麦粉は、遺伝子組み替えによって大幅に収量増
  加を果たした小麦から作られているが、その小麦に含まれているタンパク質であるグルテンには
  様々な害作用がある。その一つは麻薬様作用である。グルテンが消化管内で分解されて生じる
  ペプチドのなかには、脳内のオピオイド受容体に結合するものがあるようである。一般には「エク
  ソルフィン」と呼ばれている。これは陶酔効果をもたらすために、小麦製品を食べると快感を感じ、
  さらには依存性があるために止められなくなるのである。

<痩せる方法 その4>
砂糖(ショ糖)、異性化糖を摂取しない
 ・糖質はデンプンの形で摂取すれば良く、精製されたショ糖を多く使っている食品、あるいは異性化
  糖(果糖ブドウ糖液糖など)が大量に含まれる清涼飲料水は厳禁である。
 ・余分なカロリー源になることは勿論であるが、これが体を構成しているタンパク質や脂質に結合し
  て正常な代謝ができなくなる。老化を促進することにもなる。

<痩せる方法 その5>
糖質:タンパク質:脂質の摂取割合を適正化
 ・栄養素を、糖質タンパク質、脂質に分類した場合、その摂取割合をどうすれば良いかの話である
  が、結論から言えば、現代日本人の平均的な摂取割合で良いと言える。
 ・計算は下記のとおりである。
  国民栄養調査・20歳以上の摂取平均値(平成19年度)と、これから算出したエネルギーバランス
    糖質     267.5(g/日) × 4.1(kcal) = C
    タンパク質   70.8(g/日) × 4.2(kcal) = P
    脂質      53.7(g/日) × 9.3(kcal) = F
  上記では、 C:P:F は 58:16:26 となる。
  ちなみに、厚生労働省推奨は 60:15:25 である。
  縄文人(「糞石」分析より得た)では 62:12:26 (データ:近畿大学・光永俊郎氏)だそうである。

<痩せる方法 その6>
運動をする、筋肉を付ける、太りにくい体を作る
・運動をすることによってカロリーを消費する目的もあるが、継続的に運動することにより筋肉が増え、
 全身の代謝量も増えるので、太りにくい体を作ることになる。
・間違ってはいけないのは、体内水分量を減らすような大量発汗による体重減少を起こさないことであ
 る。これは体にとって非常に危険な状況を作ることになるため、もし発汗した場合は、適宜に水分を
 補給しながら運動することである。

 「お腹周りをスリムにしたい」「下腹部ダイエット」という要求が多くあると思うが、下腹がぽっこ
 りと膨らんでいる原因は、①腹部の皮下脂肪が多い、②内臓の周りに付いている脂肪(内臓脂肪)
 量が多い、③腸が健常でないためにガスや内容物によって膨らんでいる、④腸などの内臓が全体と
 して下垂しているなどの原因が考えられる。
  このうち、脂肪については性別による違いがあり、男性は内臓脂肪が付きやすく、お腹に赤ちゃん
 を宿す可能性のある年代の女性は内臓脂肪は付きにくく、閉経以降は男性と同じく内臓脂肪が付き
 やすくなる。
  お腹周りをスリムにしたい為の一般的方法としては、腹部にある腹筋群を鍛え、筋力を若い頃の
 レベル以上に維持することである。歳を取り、社会的地位が上がるほど、背もたれにどさっと身をゆ
 だねることが多くなり、腹筋群が働く時間が極めて短くなり、お腹周りの筋肉が痩せ、代わりにお腹
 を守るために脂肪が付いてくる。運動をするのがじゃまくさいという人で、デスクワークの人は、背も
 たれのない椅子に替える
、または椅子の背もたれを外すこと。そして、自分の腹筋によって上
 半身の後傾を支えることで鍛えられる。
  腸の問題は、善玉菌などと呼ばれる乳酸菌を増やす、繊維質を多く含む植物性の食物を多めに
 摂る、副交感神経の活動を高めるために特に食後の数時間はリラックスするようにする、定期的に
 全身を使う有酸素運動をすることなどで解決に向かう。

<痩せる方法 その7>
意識改革すること
 ①「食べる」とは、体内に異物を放り込むことである。大変危険な行為であるという意識を持つこと。
  入ってくるであろう異物や病原菌に対抗するために、唾液中にはIgAなどの抗体や、リゾチームな
  どの殺菌作用をもつ酵素があり、胃では強酸である塩酸をわざわざ分泌して殺菌しようとしている。
  また、腸管壁には全身の免疫系細胞の6割ほどが集まって待機し、入ってきた異物や病原菌を
  退治しようとしている。食欲に負けて何でもかんでもパクパクと食べている場合ではない。

 ②「食べる」とは他の生命を奪うことである。米、小麦、魚、牛、豚・・・それぞれの大切な命を犠牲
  にすることである。私たちが生きるために、必要最小限の犠牲で済ませておこうとするのが理性
  のある人間の行動である。食欲に負けて何でもかんでもパクパクと食べている場合ではない②。
  野生動物ならば「肥満=死」である。体が重くなって走れない、エサが獲れない、逃げられない。

 ③「美味いものを食べる」から食べ過ぎるわけである。人間を含めた動物の体は、調味料を使って
  おいしく感じるように味付けしたものを食べるようには設計されていない。
  「美味いもの」を作って人の食欲をそそってきた人間が、近年のメタボなり生活習慣病を増やした
  張本人である。味付けをしていない餌を食べている野生動物には肥満のものはいない。

 ④「食べて痩せる」などの邪道を追い求めないこと。食べたら太るのが正常。食べて痩せるというこ
  とはなんらかの代謝異常を引き起こすしか方法はない。例えば、腸管から吸収しにくくする、ある
  部位のエネルギー代謝を正常値以上に引き上げるなど・・。健全な方法とは言い難い。商売人に
  騙されないように。

 ⑤厳しいかもしれないが、己の体重コントロールすらできない人間にまともな仕事ができるわけが
  ない。世間一般にこのような評価がされているわけであり、己の活躍を望むのなら、世間の評価
  に耐えうる美しい体になることに越したことはない。

 ⑥食べなければお腹のまわりの肉は減り、冷蔵庫の中の肉は減らない。

<最後に>
痩せてはいけない。適正体重を維持すること
 何事にも適正値というものがある。

<関連リンク>
 老化を遅らせる方法
 栄養  栄養素の代謝
 消化と吸収
 糖質(炭水化物)
 中性脂肪  コレステロール
 必須脂肪酸
 タンパク質  アミノ酸
 脂溶性ビタミン 水溶性ビタミン
 ミネラルの話  カルシウム


2012年12月 更新
stnv基礎医学研究室・清水隆文


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